学会組織

会長挨拶 (2014)

  • 2014/1/1 

Summary

2014年の年始めに気持ちも新たに,今期も会員の皆様にとってより有意義な学会となるよう真摯にそして全力で学会運営に,副会長そして各幹事の協力のもと,一丸となって当たっていきたいと思います.

 日本比較生理生化学会会員の皆様,新年明けましておめでとうございます.

 会員の皆様のご健勝とご研究のますますの発展をこころよりお祈り申しあげます.

 さて,会長一期2年をおえ,本年2014年1月1日よりあと一期を努めさせていただくこととなりました.会長就任のおりに,ぜひ実行したいことを4つ挙げました.①比較生理生化学分野の促進,②若手研究者の育成と国際化,③関連分野との連携,④学会のアウトリーチ活動です.今期,一部役員が交代いたしますが,副会長,各幹事役員(表)の協力を得て基本方針は変わらず進めていく所存です.

 すでにご案内のように, 2014年度の大会はICNとの並列開催(2014 ICN / JSCPB)となりました.これは,①比較生理生化学分野の促進や②若手研究者の育成と国際化に大きくつながるものです.関連して,2014 ICN / JSCPBへの若手会員の参加支援のための予算が2013年度姫路大会で認められました.また,「原富之賞」が設立され、若手研究者の国際学会への渡航費の継続的な支援も実現されました.2015年には,ICCPB2015(国際比較生理生化学会議)が,ポーランドのクラクフ(Kraków)で開催されます.若手研究者にはこのような制度を有効に活用して国際舞台での活躍に利用していただければと思います.

 また,若手研究者の大会参加意欲を高めるための検討も将来検討委員会(志賀向子幹事)が中心となり行われています.その1つとして,発表論文賞の授与規定を改定し,受賞対象を学生と博士研究員等に限定し,大会委員長賞の枠を5件まで広げられるようにしました.これにより,より多くの若手研究者のエンカレッジが図られるものと期待しています.

 大会発表の英語化も急速に進んでいます.2012,2013年度の葉山大会(蟻川謙太郎大会委員長),姫路大会(池野英利大会委員長)では,ポスターと2分間のポスター紹介は英語でのプレゼンとなり,シンポジウムも英語化されました.当初,発表の英語化に対する懸念もありましたが,英語化は自然な流れと受け止められ,間違いなく定着していくものと思います.

 英語化と関連して,姫路大会では新しい試みとして,ネットワーク(スカイプ)を介して海外からシンポジウムの講演をいただくことにチャレンジしました.時間的空間的な違和感はなく,シンポジウムが執り行われたものと思います.海外との事前の調整には時差もあり苦労されたようですが,このような新しい試みを導入いただいた池野大会委員長には感謝すると共に,ネットワークを併用して海外から参加いただくシンポジウムは,本学会の1つの特徴となっていくものと期待するところです.本学会は規模的に小回りがきくので,新しいことに果敢に挑戦できる学会であると感じています.このような果敢なチャレンジが,①比較生理生化学分野の促進や③関連分野との連携につながっていくものと確信しています.

 従来から,本学会は日本比較内分泌学会(田中滋康会長),日本比較免疫学会(吉田彪会長)とは合同大会を実施しつつ連携を図っています.また,日本光生物学協会(真嶋哲朗会長,14学会・研究会からなる)にも志賀向子氏(大阪市立大)が本学会の代表として参加し,光生物学の振興に協力しています.志賀氏には本年度も引き続き委員をお願いしました.さらに,昨年,国内の昆虫科学関係の学会が連携した「日本昆虫科学連合(山下興亜代表)」が結成され,本学会もそのメンバーとして参加し,沼田英治氏(京大)と神崎が委員を務めました.今期からは弘中満太郎氏(浜松医大)と神崎が担当します.日本応用動物学会,日本昆虫学会,日本農芸化学会,日本動物学会をはじめ15の学会が参加していますが,昆虫の生理生化学においては本学会がきわめて重要な立ち位置を占めており,他学会との連携のなかで,本学会をアピールし,存在意義を高めていくことができるものと思います.

 ③関連分野との連携ということでは,2015年度の大会は,日本比較内分泌学会との合同開催を検討しています.これまでも比較内分泌学会とは合同開催を時折行ってきましたが,定期的に合同で行うなど具体的な方策についても考えたいと思います.また,昆虫科学連合,生物科学学会連合,さらには光生物学協会などを通しても関連学会とは密に情報交換できるようにしていきたいと思います.

 ④アウトリーチ活動については,現在,尾崎まみこ副会長が中心となり,出版委員会が立ち上がり,「研究者が教える動物実験 – 感覚・神経・行動 – (全3巻)」の2014年の出版をめざして活動いただいています.すでに原稿は集まり,その編集作業に取りかかっています.出版委員会委員はもちろんですが,執筆にご協力をいただいた本学会の多くの会員にはこころより感謝申しあげます.

 これと平行して,会員の皆様から提供いただいた比較生理生化学に関する画像,テキスト,また実験データなどは,理化学研究所に開設されている「無脊椎動物脳プラットフォーム」(http://invbrain.neuroinf.jp/ ;委員長:神崎)から,本学会の承認もいただき公開しています.今後,動物全般にわたる比較生理生化学に関する情報を,本学会のHP(竹内浩昭ネットワーク担当幹事)と連携しながら,広く世界に紹介していくことを考えています.そのため,これまで無脊椎動物に限定していたコンテンツを動物全般に広めるためにプラットフォームの名称を変更するとともに,新たに「プラットフォーム担当幹事」を承認いただきました.池野会員に幹事を担当いただき,会員の皆様から提供いただいたデータを効率的に公開し,本学会の活動を広く紹介するための施策を検討したいと考えています.

 本学会のまさに顔となり,好評をいただいている学会情報誌「比較生理生化学」は,黒川信前編集幹事の並々ならぬご苦労により,新しい項目も追加され,楽しく読めて勉強になる内容が満載となっています.本誌の要である編集委員長を長期にわたり担当いただいた黒川会員にはここよりお礼申しあげます.今期は,村田芳博会員に編集幹事をバトンタッチいただき,「比較生理生化学」は新しい世代に引き継がれることになりました.本学会から会員また外部への「新たな顔」として情報公開が図られるものと期待しています.

 本学会は高校教員などを対象とした会員枠(別枠正会員)を新設するなど,高校と連携し,比較生理生化学の教育にも力を注いでいます.伊藤悦朗行事幹事には,本学会員と高校教員等を交えた意見交換の機会を企画いただいています.それを受けて姫路大会では,文科省初等中等教育局の田代直幸教科書調査官や高校教員をお迎えし,シンポジウム「生物教育の現状と将来」が行われました.また,ご案内のように高校では,新指導要領とそれに伴う教科書の大幅な改訂があり,高校生物には用語を含めさまざまな批判が挙がっています.大学入試の問題作成にとっても重大な課題となっています.そこで本学会では,藍浩之会員が中心となり,比較生理生化学分野の適切な用語や記述,内容について検討する「教科書問題検討委員会」が動き始めました.生物科学学会連合とも協調して,生物教育に具体的に貢献していきたいと考えています.

 この2年間で,長らく積み残しになってきた大きな課題の1つを解決することもできました.それは本学会の「学会賞」の扱いです.本学会には,これまで学会の賞として,「吉田記念講演」(後に「吉田記念賞講演」),「吉田奨励賞」および「発表論文賞」がありましたが,日本比較生理生化学会を冠したいわゆる「学会賞」がなく,「吉田記念賞講演」を「日本比較生理生化学会 学会賞」と,正式にではありませんが,該当させてきました.2013年度の姫路大会においてこれまでの「吉田記念講演」,「吉田記念賞講演」を正式に「日本比較生理生化学会 学会賞」として引き継ぎ,授与規定を制定し,新しい審査体制のもとで選考されることとなりました.「日本比較生理生化学会 学会賞」の制定については,幹事会で1年以上をかけて議論し,評議委員会,そして総会で承認いただき,今回の運びとなったわけです.長らく懸案事項となっていたこともあり,一仕事できたという気持ちで一杯です.

 このような学会運営を行いながら,課題も多く出てきています.大きな課題の一つは,学会運営の基盤となる事務局(本部)の運営についてです.これまでは会長の近くの教員が庶務幹事として事務局を運営してきたかと思いますが,この運営業務は想像以上に激務で,しっかりとやればやるほど教育・研究という本務に支障を生んできました.学会の資金が十分であれば,専任のかたに事務局を担当いただくこともできるでしょうが,本学会にはそれは許されません.安藤規泰前庶務幹事には,研究活動をかなり犠牲にしていただき,庶務をご担当いただくことになりました.本部業務をスムーズに進めることができたのは,安藤会員の献身的な運営業務のおかげであり,安藤会員なくしてこれまでの学会運営は不可能でした.安藤会員には心より感謝申しあげるとともに,本学会のように小さな学会の事務局運営のあり方については真剣に検討する時期に来ているものと感じています.事務局のあり方は,本学会の継続にも関わる重要事項の1つですので,まずは幹事会で意識して検討したいと思います.今期は,庶務幹事を木下充代会員と関洋一会員に担当いただきますが,業務の負担をアルバイトの導入により少しでも軽減できる方策を探っていきたいと考えています.そのためには,賛助会員を増やすなど積極的に会費収入を上げていくことも必要と思います.その他,比較三学会シンポジウムのありかたや,学会の法人化の件も決断が迫られている重要課題となっています.

 2014年の年始めに気持ちも新たに,今期も会員の皆様にとってより有意義な学会となるよう真摯にそして全力で学会運営に,副会長そして各幹事の協力のもと,一丸となって当たっていきたいと思います.会員の皆様には,なにとぞよろしくご支援賜りたくお願い申しあげます.

 

  2014年1月1日 

日本比較生理生化学会 

会長 神﨑 亮平 

2014-2015年期 日本比較生理生化学会役員

 

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